共通テスト生物から学ぶこと

今年も1/15、16にかけて大学入試試験【共通テスト】が行われました。物理や化学の平均予想点が60点を超える中で生物は37~39点であり、国が学生に求める生物力が上昇してきている証拠と捉えています。編入受験生の皆様の学習のために、共通テストに出題された生物・生物基礎から一度解いてほしい問題を改題し6問ピックアップしました。問題の見やすさを配慮し、PCもしくはタブレットのご利用をお勧めします。

紙とペンをご用意の上、以下を解きなさい。
[合格点 5/6 (83%)]

問題1

免疫には、(a)物理的、化学的な防御を含む自然免疫と(b)獲得免疫とがある。また、免疫を人工的に獲得させ、感染症を予防する方法として(c)予防接種がある。

問1
下線部(a)に関する記述として誤っているものを選べ。
① マクロファージは、細菌を取り込んで分解する。
② ナチュラルキラー細胞はウイルスに感染した細胞を食作用により排除する。
③ 唾液に含まれるリゾチームは、細菌の細胞壁を分解する。
④ 皮膚の角質層や気管の粘液は、ウイルスの侵入を防ぐ。
⑤ 汗は皮膚表面を弱酸性に保ち、細菌の繁殖を防ぐ。

問2
下線部(b)に関連して、抗体産生に関する次の文章中の(エ)に当てはまる語句として最も適当なものを一つ選べ。

 ウイルスWが感染したすべてのマウスは、10日以内に死に至る。ウイルスWを無毒化したものをマウスに注射したところ、2週間後、マウスは生存しており、その血清中にウイルスWの抗原に対する抗体が検出された。この過程において、マウスの(エ)の接触は重要な役割を果たしたと考えられる。

① 胸腺における樹状細胞とヘルパーT細胞
② 胸腺における樹状細胞とキラーT細胞
③ 胸腺におけるヘルパーT細胞とキラーT細胞
④ リンパ節における樹状細胞とヘルパーT細胞
⑤ リンパ節における樹状細胞とキラーT細胞
⑥ リンパ節におけるヘルパーT細胞とキラーT細胞

問3
下線部(c)に関連して、ウイルスWを無毒化したものを注射してから2週間経過したマウス(以下、マウスR)、好中球を完全に欠いているマウス(以下、マウスS)、およびB細胞を完全に欠いているマウス(以下、マウスT)を用意し、実験1〜3を行った。後の記述(J)〜(O)のうち、実験1〜3でそれぞれのマウスが生存できたことについての適当な説明はどれか。その組み合わせとして最も適当なものを後の①〜⑧のちから一つ選べ。

実験1
マウスに無毒化していないウイルスWを注射したところ、このマウスは生存できた。

実験2
マウスSに、マウスRの血清を注射した。その翌日、さらに無毒化していないウイルスWを注射したところ、このマウスは生存できた。

実験3
マウスTに、ウイルスWを無毒化したものを注射した。その2週間後に、さらに無毒化していないウイルスWを注射したところ、このマウスは生存できた。

(J) 実験1では、ウイルスWの抗原を認識する好中球が働いた。
(K) 実験1では、ウイルスWの光源を認識する記憶細胞が働いた。
(L) 実験2では、ウイルスWの抗原に対する抗体が働いた。
(M)実験2では、ウイルスWの抗原を認識する記憶細胞が働いた。
(N) 実験3では、ウイルスWの光源に対する抗体が働いた。
(O) 実験3では、ウイルスWの光源を認識するキラーT細胞が働いた。

①J、L、N ②J、L、O ③J、M、N ④J、M、O ⑤K、L、N ⑥K、L、O ⑦K、M、N ⑧K、M、O

問題2

問1 
ショウジョウバエでは、タンパク質XのmRNAは母性因子の遺伝子(母性効果遺伝子)(以下、母性遺伝子)から転写され、卵の後端の細胞質に蓄えられる。母性遺伝子Mに関する次の文章中(ア)、(イ)に入る数値として正しいものを選べ。ただし同じものを繰り返し選んで良い。なお、遺伝子Mは常染色体上にあり、母性遺伝子としてのみ働くとする。

 遺伝子Mと、その働きを失った対立遺伝子mとをヘテロ接合で持つ個体同士を交配して得られた受精卵のうち、理論上は(ア)%が成虫まで発生する。このとき、成虫まで発生したすべての雌と野生型の雄とを交配して得られる受精卵のうち、(イ)%が成虫まで発生する。

① 0 ② 25 ③ 50 ④ 75 ⑤100

問2 
原核生物における遺伝子発現の調整に関する記述として最も適切なものを一つ選べ。
① オペロンを構成する個々の遺伝子の転写は、それぞれ異なる調節タンパク質によって制御される。
② オペロンを構成する個々の遺伝子は、それぞれ異なる種類のRNAポリメラーゼによって転写される。
③ リプレッサーは、RNAポリメラーゼに結合して遺伝子の転写を抑制する。
④ 転写には、核内にある基本転写因子が必要である。
⑤ 調節タンパク質は、オペレーターに結合して遺伝子の転写を制御する。

問3 
原核生物と真核生物の比較に関する記述として最も適切なものを選べ。
① 核酸は、原核細胞にも真核細胞にも存在するが、核酸を構成する塩基の種類は両者で異なる。
② 酵素は、原核細胞には存在しないが、真核細胞には存在するので、真核細胞では原核細胞よりも代謝が速く進む。
③ ATPは、原核細胞でも真核細胞でも合成されるが、原核細胞にもATP合成の場であるミトコンドリアは存在しない。
④ 細胞の大きさは、原核細胞よりも真核細胞のほうが大きいことが多いが、原核細胞と真核細胞のどちらにも1個の細胞を肉眼で観察できるものはない。
⑤ 呼吸は、多くの真核細胞が行うが、原核細胞は行わない。

解答・解説

▶️解答
問題1
問1:2
問2:4
問3:6
問題2 
問1:ア=5 イ=4
問2:5
問3:3

▶️解説
問題1
問1
ナチュラルキラー細胞がウイルス感染した細胞を殺傷することは間違いないのですが、食作用によるものではありません。殺傷の機序としては、パーフォリンで標的細胞に孔を開け、その孔からグランザイムというセリンプロテアーゼを注入し細胞死を誘導するものです。
その他の選択肢に関しては正答ですので、このまま覚えておきましょう。

補足情報
NK 細胞は,ウィルス感染細胞を直接認識していますが、どうやって正常細胞とウイルス感染細胞を見分けているのでしょうか。それは、NK 細胞はMHC クラス I 抗原を認識する抑制化レセプターを用いて,MHC クラス I 抗原を発現している細胞を自己と見なし,発現していない細胞を非自己と認識しています。つまり、 MHCクラス I の発現が低下している細胞を殺傷しており、ウイルス感染細胞は実際にMHCクラス I の発現が低下しています。
※腫瘍細胞はNK細胞の殺傷から逃避するためにMHCクラスⅠの発現量をキープするよう変異が蓄積していくことが知られています。
※R1ヨーグルト(meiji)はNK細胞を活性化することが知られています。

問2
ワクチンの機序についての問題でした。これは生物基礎から引用しており、共通テストを作成する教授陣は文系高校生であってもこれは理解してほしいと思っています。いわんや編入生は当然知っておきましょう。
胸腺はT細胞が成熟する場であり、外来物に対する免疫応答の場ではありません。また、プロフェッショナル抗原提示細胞である樹状細胞は獲得免疫の指令等であるヘルパーT細胞に補足した抗原を提示することで、自然免疫から獲得免疫へと橋渡しを行います。

補足情報 胸腺教育
胸腺ではT細胞を教育しています。適度に自己と反応するT細胞を選ぶ「正の選択」と、自己に強く反応するT細胞を除去する「負の選択」の二つを経た、”良い”T細胞のみが生き残れます。この機構がうまくいかないと、自己免疫疾患などの原因になります。

問3
実験1
用いられたマウスは野生型です。ワクチンは記憶細胞の生成を促しています。
好中球は自然免疫のメインキャラクターであるため、今回は関係ありません。好中球でウイルスWを殺傷できるのであれば、ワクチンを打つ前でもウイルスWで死なないはずですが、問題文によると10日以内に死亡しているため、自然免疫のみでは対処できないウイルスであると言えるでしょう。そのため、選択肢はKが正しくなります。
実験2
用いられたマウスは好中球欠損マウスです。マウスRの血清を注射し、ウイルスWから生存できていることから、これは血清中に含まれる抗体がウイルスWを中和したのではないかと考えるのが妥当です。そのため、選択肢はLが正しくなります。
実験3
用いられたマウスはB細胞欠損マウスです。B細胞の役割は、抗原刺激により形質細胞に分化し抗体を分泌することです。つまり、このマウスでは抗体による防御が効かないため、獲得免疫系の全てをT細胞が担うことになります。そのため、選択肢はOが正しくなります。

補足情報 実験2
現代の医学でもヘビ毒などでは、血清療法が用いられいます。このように自分で作っていない免疫で身を守ることを受動免疫と呼びます。反してワクチンや感染により自分自身が免疫をつけることを能動免疫と呼びます。

問題2
問1
遺伝の問題でした。母性遺伝の問題を解いたことがない人は引っかかってしまう良問です。母性遺伝子は卵子が形成される中であらかじめ蓄えられているmRNAであるため、母親由来のmRNAが蓄えられています。。父親由来の精子には母性因子含まれていません。これを踏まえて考えましょう。

ア:ヘテロ接合で持つ個体同士を交配して得られた受精卵
ヘテロ接合ということは遺伝子Mを持っていることに他なりません。故に母は遺伝子Mを用いて卵巣内の卵子に母性因子を蓄えておくことができます。よって、100%の確率で発生がうまくいくことになります。

イ:アで発生した雌と野生型雄との交配
アで発生した子の遺伝子型を考えましょう。母と父がともにヘテロ接合であることを考慮すると、子供の遺伝子型はM/M:25%、M/m50%、m/m25%となります。Mが一つでもあれば母性因子は卵子の中に蓄えることができるため、前2者は正常な生育が可能と言えます。よって、解答は75%(25+50)となります。
ちなみに、野生型雄は母性因子に関与しないため、どんな遺伝子型でも構いません。

補足情報
母親から受け継がれるものとしては、ミトコンドリアが有名です。ミトコンドリア病は慢性進行性外眼筋麻痺症候群などがあげられます。
母親に疾患がなくても、母親に存在する変異が入ったミトコンドリアが偶然的に卵子多く入ってしまった場合疾患を発症することになります。この場合、正常と変異のミトコンドリアが混合している状態となり、この状態のことをヘテロプラスミーと呼びます。ヘテロプラスミーの中でも、変異ミトコンドリアがどの割合を占めているのかが疾患の重症度を決めると言われています。ヘテロプラスミーは過去に編入試験で問われているため、自分なりに書けるようにしておきましょう

問2
オペロンは暗記ではありません。なぜこのような機構が存在しているのか、意義を理解し個々の問題に対応しましょう。

問3
真核生物は古細菌にミトコンドリアが寄生したものであるという「細胞共生説」が現在主流です。よって、原核生物にミトコンドリアがいるわけない、と断定していただきたいと思います。
①:核酸はA.T.G.Cであり、真核生物でも原核生物でも不変です
②:酵素が存在しなければ、細胞を維持することはできません。ATP産生をはじめとして、ほぼ全ての反応に対して酵素が関与しています。
④:実は、ゾウリムシは肉眼で見えます。肉眼の限界は0.1~0,2mmです。この数字は覚えておきましょう。
⑤:原核生物も嫌気的呼吸を行います。アルコール発酵や乳酸発酵を行うことで、NADプールを維持するという斬新な方法をとっています。ヒトでも、酸素が足りない場合は乳酸発酵します。

補足情報 見える限界
肉眼:0.1~0.2mm
光学顕微鏡:0,2μm
電子顕微鏡:0,2nm

補足情報
ヒトは呼吸で産生されたATPの過半数以上をNa-K ATPaseに使用されています。感覚、刺激の全てはナトリウムとカリウムの細胞内外のイオン濃度差があることによって検知されているため、これが最も重要です。脳ではATPが多く必要な理由の一つもこれに由来します。

疑問点

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